雨の日は本のことを書きたい。

断捨離を逃れた本の中から、特に繰か繰り返して手に取る本のことを書きたい。
正しくは自分にとっては断捨離対象になんかできない本たち。
二十一世紀に生きる君たちへ
歴史小説家の司馬遼太郎先生が子供向けに書いた初めてのエッセイで、小学校の教科書へ採用に、されそうでされなかったエピソードもある。
子供にわかりやすく、優しい文で「お話」を聞かせてくれるように書いている。

骨太な歴史小説を数々書いてきた司馬さんの、歴史に対する思いと子供たちへの願いを簡潔にわかりやすく書いてある。
中でも好きな部分は、冒頭近くの
❝歴史とは何でしょう、と聞かれるとき、「それは大きな世界です。かって存在した何億という人生がつめこまれている世界なのです❞
からの後半
❝この楽しさはーもし君たちさえそう望むならーおすそ分けしてあげたいほどである。❞
このくだりが特に好きで、繰り返し繰り返し読んできた。
歴史は綿々と人が生きて、繋げてきた物語。
そして、後半に子供たちに司馬さんはこう言う。
「自己を確立せよ」
「自分に厳しく、相手には優しく」
「いたわり」
それらを訓練することで、自己が確立されていく。
❝たのもしい君たち❞になっていくのである。
洪庵のたいまつ
この本の後半には、『洪庵のたいまつ』という短編小説も入っている。
江戸時代の蘭学医の緒方洪庵の人生を書いたもので、
❝世のためにつくした人の一生ほど、美しいものはない❞という有名な冒頭から始まる。
備中足守藩の藩士の子に生まれた洪庵は、侍になるために剣術道場や漢学塾に通ったが、うまれつき体が弱く、しばしば休んだ。
「この体何とかならないものだろうか」ー少年洪庵は思い考えた。
❝人間は、人並でない部分を持つということは、素晴らしいことである。
そのことが、ものをかんがえるばねになる❞
少年洪庵も考える。
しかも、理詰めで考える。
❝人が健康であったり健康でなかったり、また病気をしたりするのということはいったい何に原因するのか❞
↓
さらには、人体とはどういう仕組みになっているのだろうと考えこんだ。
↓
考えた結果、蘭学とくに蘭方医学を学びたいと思うようになり、行動を始めていく。
蘭方医になった洪庵は、大阪の自宅で『適塾』なる蘭学塾を開き沢山の弟子を教えて世に出していく。
福沢諭吉、大村益次郎、大鳥圭介など幕末~明治にかけえての重要人物が育っている。
また、手塚治虫のご先祖様も在籍していたようで漫画『陽だまりの樹』にも描かれている。
後年、洪庵は幕府から「江戸へきて、将軍様の侍医(奥医師)になれ。」と命令され、断り続けたが聞いてもらえず、いやいやながら奥医師になった。
その翌年に、あっけなく亡くなってしまうのである。
洪庵は、健康とは?なぜ病気になるのっか?人体はどうなっているのか?の疑問から蘭方医になり、蘭方医になってからは、患者を治療するかたわら塾を開き弟子に蘭学を教えたりした。
緒方洪庵の大偉業は、蘭学という知識を次世代に繋ぎ伝えたことだ。
後半、性に合わない奥医師の仕事と慣れない江戸の暮らしが原因か、早くに亡くなってしまう。
大出世も都会での華やかな暮らしも、
本人が望まなければ命を縮めるくらい強烈なストレスでしかないとも学べた。
もっともっと、深読みしたい。
以上!
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